弓ヶ浜公園は、白砂青松の日本海に隣接した14haの総合公園である。障害のあるなしに関わらず「みんなが共に遊ぶ」ことを目標に、ワークショップや事前検証による計画・設計を経て、平成10年10月、弓ヶ浜公園「みんなの遊具広場」は開園した。大きな船の複合遊具を設置した広場の面
積は約2ha。このうち船首と船尾に分かれた船の総床面積は約0.5haである。
●みんなの遊具ワークショップ
ワークショップは、特に「地域特性と利用者ニーズの把握」と「利用者間の相互理解」に重点を置いて進めることにした。
公園敷地内と体育館を舞台に、「木の枝や葉、土や水に親しむプログラム」、「飛んだり跳ねたりするプログラム」、「体育館いっぱいのダンボールを使った創作プログラム」などを主軸に据えたワークショップを開催した。ワークショップには、子供と保護者60名、ファシリテーターやコーディネーター10名の総勢70名が参加した。保護者が求める遊具像や日本海に面
した土地にまつわる様々な説話などを抽出することができた。また、日程の都合により参加できなかった米子市内の養護学校の生徒や父兄、先生に対しても後日ニーズ調査を行い、ワークショップ参加者のニーズとあわせて検討した。
●遊具の形とコンセプト
○屋外遊具であることから、その公園へ来たことに意義が感じられるように、立地環境等の地域特性を最大限に引き出す。
○障害は多様であり、一様な対応は不可能である。従って、的確な情報提供と多様な空間提供によって、自分の持ちうる感覚をすべて活用しながら遊べる環境を準備する。
○新たな地域特性を想像させるストーリーの伝達と、自分たちが提案したワクワクするデザインによって、障害児にも健常児にも勇気とチャレンジの精神を育む。
○遊具による「道徳教育」を実施するのではなく、障害のあるもの、ないものが自然に集える空間をつくり、体験を通
して共に生きること(インテグレーション)を理解させる。
●計画・設計・施工・検証のコラボレーション
健常者なら難なく越えられる3cmの段差によって全く使うことができない空間になることがある。このような状況を防ぐために、工事が80%程度完了した頃、市内の養護施設の生徒及び職員、また車椅子団体、視覚障害者から遊具広場の検証を受け、微調整を行いながらオープンに備えた。
●開園 広場のオープンイベントでは300人以上の子供たちが船の帆を張った。一人一人の思いを描いた帆が青空に広がった時、子供たちの大きな歓声がわき起こった。
ワークショップに参加していたお母さんは「あの時の段ボールがこの遊具になったのですね。ありがとう、大切にします。」といわれた。そして、人の波が少し減った頃を見計らい、幼児用の車椅子を船首へと静かに移動させていった。
障害がある子もない子も、「共に生きる」ことが自然であり当たり前なことであるという風景が、弓ヶ浜公園「みんなの遊具広場」から発信されていると信じている。
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